![]() ACT3 楽屋裏のことなど 館主 稽古が一週間弱、そして1日半の収録というハードスケジュールでしたけど、やっぱり長いセリフでは苦労されましたか? 以倉 いえ、覚えること自体は、電車の中でもお風呂の中でも、とにかくいろんな時間を使って早いうちから始めていたので。むしろ、相手役の出方がわからないままセリフを覚えるという経験が自分としては初めてだったので、そういうやりにくさはありました。こんなにも体になじまないものかと。やっぱりお芝居は、相手とやり合うから面白いんですよね。 館主 なるほど、今回は初共演の方ばかりでしたからね。自分のカンパニーでやるのとはまるで違いますよね。 以倉 その分、最初の読み合わせがすごく新鮮でしたね。不安もありましたけど…。 館主 共演者の方は、どうでした? 以倉 みなさんすごく素敵な方で、読み合わせの日の最初の飲み会からみんなすっかり仲良しになって、稽古の後には1日おきくらいで飲みに行ってました。モロッコ料理も食べに行ったし…。 館主 いいなあ。私は最初の飲み会とあと一回くらいしか加われませんでしたが、最初から、ああ、いいチームだなと思ってました。年齢も、それまでの経歴も見事にバラバラだったけど、みんな役にもぴったりはまってたし。収録が終わってもうかなり経ちますが、最近でも行き来はあるんですか? 以倉 鈴木くんとはこの前高円寺で会いましたし、先々週は、茜ちゃんと一緒に増沢さん出演の「ルル」(@世田谷パブリックシアター)を観に行ってきました。その後は楽屋をお訪ねして…。 館主 あ、「ルル」、私も行きましたよ。楽日の前々日だったかな。 以倉 その次の日に、私たち観に行ったんです。そしたら増沢さんが、「昨日大嶋さんも来てくれたよ」って。 館主 増沢さんのアルヴァ、カッコよかったですよね、スマートで。やさぐれた深瀬役とは全然違ってて。 以倉 そうですね。印象が若いんでびっくりしました。古谷一行さんの息子の役ですもんね。 館主 お坊ちゃんで、自分で金を稼いだことのない役。でも甘ったれで文弱っていうところは少し深瀬とつながるのかも知れません。ご自分のHPでも、「なさけなカッコいい系」を目指したいと書かれてましたが(笑)。増沢さんとは不倫関係の役でしたけど、稽古中に何か役作りは? 以倉 いえ、特に何も。初めて登場する、2人して雨の中を帰ってくるところでは、出番待ちの時に、微妙なアイコンを交わしたりしてましたけど…。 館主 たしかに微妙だなあ(苦笑)。ホールに入ってからの、本番収録時のハプニングとか、大変だったことなんかありますか? 収録打ち合わせ中の館主と増沢、以倉以倉 2日目の昼間は、結構細かくカメラをとめながらの収録だったんですけど、あれは正直きつかったですね。お芝居というのは流れでやっているので、映画とかテレビみたいに、ここからここまで、よーいスタート、みたいにやられると、セリフに感情がついてこないというか…。それで、かまずにすむようなところでもかんでしまったりして。 館主 ああ、あれはこっちもきつかった。あんなに回したりとめたりするつもりはなかったんだけど、一回NGが出ると、それがどんどん伝播しちゃうんですよね。それで、結局つぎはぎだらけになってしまって。やっぱり、演劇として作ってきたものを映画的に撮るのは違うよなあ、って痛切に感じました。だから、2日目夜の最終収録は、何があっても止めずに回そう、ということにしたんです。編集していく中でも、どこをどう使うべきかということで、いろいろ思考錯誤はあったんですが、完成版に残った映像の8割はやはりその最終収録のものです。流れに乗ってやっている方が、役者さんも気持ちが入ってるし、細かいセリフに間違いはあったとしても、全体のあがりはいいんですよね。 以倉 そうですね、芝居は生ものですから。でも私、その最終収録で、外出用の着物から浴衣に早替えをする時、あわてて舞台のそででスッテーンと転んで、腰を思い切り打ちました。 このスチール撮影のあと、腰を…館主 え、そんなことがあったんだ。全然気がつかなかった。 以倉 それまでは、私の衣装とメイクが変わる時はカメラをとめていただいてたじゃないですか。だから余裕を持って着替えられたんですけど、最終は、ぶっ通しだったんで。 館主 ああ、そうか。それはひどい目に遭いましたね。じゃあ、後半は痛みをこらえつつ? 以倉 いえ、自分でも、その時は痛みは感じなかったんです。収録が終わって、打ち上げで飲んでる時も平気で、でも次の朝起きようとしたら…。 館主 起きられなかった? 以倉 まあ、何とか起きたんですけど、ほとんど動けなくて。すぐ整体に行きました。1週間くらい痛みが引かなかったですね。 館主 そういうことがあったとは。でも、その時には涼しい顔で芝居をやり切るんだから、役者さんの集中力っていうのは大変なもんですね。 ACT4 濃厚なシーンも? 館主 近々、舞台もやられるそうですが。以倉 ええ、5月の6〜8日、西荻窪のがざびぃで「蜘蛛」というお芝居をやります。不思議な因縁というか、「実験室」とまったく同じ、昭和23年の話で、私がやる「女」という役も営子と同じ、34、5歳なんです。 館主 それは奇妙な偶然ですね。しかも、このチラシを見ると、営子と同じような着物を着てたりする…。 以倉 自前なもので(苦笑)。でも、舞台では着物は着ないんです。 館主 あ、そうなんですか。折角なので内容と役柄の方も、ネタばれにならない範囲で教えて下さい。 以倉 ある罪を犯して刑務所に服役していた「女」が、出所してからある「男」と知り合いまして、その男と幸せな結婚生活を営むんです。しかし、実は男には女の知らない心の闇があって…、という、不幸→幸福→不幸という流れに翻弄される女の役だと思っていただければ。イギリスで実際にあったペーター・キュルテン事件をもとに書かれたお話しです。 館主 ペーター・キュルテン? うーん。あまり突っ込むとお芝居を見る楽しみがなくなるのでこの辺にしときましょうか。では、ずばり見どころは? 以倉 私にしては、男性とのラブラブな場面が多いのではないかと。こんなに愛し愛されたら幸せだろうなあ、と観て下さる方にも思ってもらえるよう、精いっぱいやらせていただきます。 館主 じゃあ、結構濃密なシーンも? 以倉 いえいえ、可愛いもんです。あくまで、私にしてはっていうことで。 館主 「実験室」の営子は2人の男性の間で揺れ動いてましたけど、今回はその「男」だけにぞっこんなわけですね。 以倉 ええ。もう一身に愛情を捧げて。でも、客観的に見ると「馬鹿な女だなあ」って感じなんですけど。 館主 そりゃまたどうして。 以倉 だって、普通結婚する相手のことって、もう少し調べるじゃないですか。そうすればもっと早く気がつくはずだと思うんですよね、男の…。 館主 はい、そこまで! 何に気がつくかは、直接劇場でお確かめいただくということで。 以倉 そうですね。時代背景や元になった事件、男女の関係など、いろんな要素が絡みあった面白いお芝居だと思うので、是非ご覧いただければと思います。 館主 私も観に行きます。では、稽古の方がんばって下さい。今日はお忙しいところありがとうございました。 ※公演は好評のうちに終了しました 以倉いずみという女優さんを知ったのは、今から2年前の春。ちょうどタクラマ館OPENのころだったので、このサイトの歴史とともに彼女があるという印象です。おととしの鎌倉フォトセッションの時はまだ二十代だった彼女も今では次のステップにあがり、ますます女っぷりに磨きがかかっているというところでしょうか。少なくとも、今回の「実験室」の営子役は、2年前の彼女には難しかったように思います。そう考えると、年を重ねるのも悪いことだけではないのでしょう。以倉さんにはこれからも女として、人間として、ますます丸み、いや円熟味を増していってほしいものです。でも、真夜中の「チーズもち」と焼酎はほどほどにね。 (2005/04/30) アーカイブへ トップページへ |